『プロローグ-O-』

3/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
作業着に着替えている最中、Kが息も切らさずにゆっくりと教室に入ってきました。 K、彼はIと違い落ち着きのある人間です(しかし、その落ち着きようがかえって不運でした)。 成績は良く、テストでは私とよく点数争いをしていました。 しかし、Iほど読解力はなく、議論(これは放課後に教室で突然始まるもの)では私の意見を理解するのにIを通す程です。 「遅かったじゃんか」 これは私ではなくIの台詞です。 私はKに自ら話しかけることをしません。 それは競争心に似たものが間に挟んでいて、自ら話しかけることは負けのような空気が暗黙の了解で存在していたからでした。 「ああ…寝坊した」 「早く着替えたほうがいいぜ。今日の実習は○○だから…」 そんなやり取りを背中で聞き、黄色階段を6階まで上がるのでした。 実習も競争です。 俗に言う頭のいい人間というのは、早く実習を終わらせなければいけないらしいので、私はいち早く実習を、Kより早く実習を終わらせるのです(昼休みを潰し、実習に専念したこともありました)。 大抵、私が早く終わります。 終わった後のKは、わざと遅くした風な態度(急に他人と話しだしたり)をとるのでした。 といっても、これは私の推測でしかありませんが…(おそらく彼は違うと答えるでしょう)。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!