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少女は、いつもの帰宅時間を大幅に過ぎて焦っていた。補習授業が長引いた上に、バスを一本逃してしまったのだ。
少女の通学路の途中には、小さな公園がある。滑り台が一つに、ブランコとベンチが二つずつ設置してある非常に小さな公園。
「暗くてちょっと怖いけど、通っちゃおうかな」
少女が通るかどうか迷っているのは、公園の奥にあるいわゆる近道。
街灯は少なく、見るからに何かが出そうである。昼間でさえ人通りはなく、近づく人は皆無。
「だ、大丈夫だよね? いけるよね」
少女は自分にそう言い聞かせた。一歩一歩、公園を進みだす少女。例の近道に足を踏み出した。
「お嬢さん」
「ひっ!! 」
突然の声に少女は勢いよく飛び上がった。
「お嬢さん、そっちに行くのはおよしよ」
「ぁっ………」
体が硬直し、振り向くことができない。思うようにのどから声を発することもできない。
どうしよう、怖い。
どうしよう、どうしよう。
今にも、崩れ落ちてしまいそうなほどに少女の足は震えていた。
「お嬢さん? 」
「…………」
「嗚呼、怯えておいでですか」
「や、やめてください」
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