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「お嬢さん?お口に前足でも突っ込んで欲しいんですか? 」
アルジャーノは、首をかしげながら前足を出した。目が爛々としていて、本気でやろうとしているようだ。少女は慌てて口を閉じ、自分の心に湧いてきた不思議な感情について思案し始める。
アルジャーノさんの悩殺ポーズだったのに、なんか変だ。可愛いのに、痛い?
痛いってどこが痛んでるのかな?
「アホな顔して何を考えているんです? 」
「………何でもないよ」
「そうですか」
それから、少女はどうも会話に集中できなかった。胸の辺りがモワモワしたり、急にアルジャーノの顔が直視出来なくなったりする。ぎゅうっと何処かを締めあげられるような感覚に陥る。
「お嬢さん、今日はこのへんで失礼しますよ」
「うん、そうだね。えっ!窓から帰るの? 」
「一応、猫ですからね。もう一度若菜さんのお顔を拝見したいところですけど、カバンに入るのは嫌ですし」
「……………」
「今日のお嬢さんは一段と可愛らしいですね」
……………ちゅっ。
アルジャーノは、言葉を発せずにいる少女の額にそっと口を寄せた。そして驚く少女をよそに、目を細め満足げに、高い位置に窓があると便利だと言い、帰っていった。
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