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「空ー、お家帰るよー。」
「ママ、もうちょっと待って。このお山作ってから。」
少年はそう言いながら手を真っ黒にし、必死に山を作ろうとしている。
「だーめ。ほらお空暗くなっちゃうよ。」
「まだ大丈夫だもん。」
「でも、早く帰らないとパパ帰って来ちゃうよ?」
母親はそう言いながら少年の側に座り込み、真っ黒になった手を拭き少年と手を繋いだ。
母親に手を繋がれ引っ張られる少年は、名残惜しそうに砂浜に眼をむける。
「明日また続きやろうね。」
「ママも一緒にやってくれる?」
「パパも明日はお仕事お休みだから三人で作ろう。」
その言葉を聞いた少年の顔が嬉しそうに明るくなる。
「約束だよ。」
そう言うと、母親の手を離し笑顔で走っていった。
「もう。空ったらー。」
空は浅葱色から夕焼けに変わろうとしていた。
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