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あまりに一瞬の早業だった。
なんで俺がこんな目に合うんだ?という疑問を考える間もなく、意識は遠退き、真っ暗な闇に吸い込まれていった。
でも、ドアが空いた瞬間、うっすらとルームランプに照らされた後部座席の同乗者には見覚えがあった。
(交差点で見かけた女の子!?)
――寒い
心地よい眠りの中を、寒さが現実に引き起こそうと邪魔する。
毛布を探そうと、手元をまさぐる腕は重い……。
ジャラ
……ジャラ?
一気に目が覚める。
安っぽい皮のソファーの上。
手には鉄色に輝く手錠。
体はずぶ濡れで、気化しようとする水分が体温を奪っていく。
肩と足はガクガク震え、歯はガチガチ音を鳴らしている。
辺りを見回す
1本の蛍光灯の青白い光で灰色のコンクリートの壁と床が強調された中に水溜まりとバケツ
そして、その上にどこの家にもあるような椅子。
「起きたか……」
背後から声がした。
振り向くと、男が立ち上がりドアを開け出ていってしまった。
――バタン
電車の広告と同じ表紙の雑誌が男が座っていた椅子の上から落ちた。
左の二の腕が微かに痛む……
て、……俺は何
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