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本編
いきかう人々の間を体温を奪おうと風がすり抜ける。太陽は既に沈み、左手首から短く鳴った電子音が22時を寂しげに知らせる。
肌身をチクリと刺すような寒さに思わず、手をポケットに突っ込んだ。
塾の帰り道、運悪く捕まってしまった赤信号を見上げ、ふと呟いてしまう。
「残り2ヶ月か……」
2ヶ月、あと2ヶ月で今後の人生が大きく変わる
信号から視線を落とすと、青に変わるのを待つ人達の白い息にまじって、セミロングの髪と赤と黒のマフラーがふわりとなびき、目に止まった。
小柄な肩の上に羽織られ青みがかったグレーのブレザーとその下から覗くベージュのセーターチェックのスカート。
(こんな時間まで制服ならやっぱりあの子も受験生か)
余計な事を考えていると、急に強く吹気抜けた風がビリジアンとグレーのチェックのスカートをいたずらにヒラリと揺らし、見えわけないとわかっていても、目がいってしまう。
――自己嫌悪。
しかし、決して小柄ではない身長に、妙に肉付きがよくスラッとしている脚が、どこぞの女優のような魅惑的な体つきを勝手に想像させてしまう。
そして、風で揺られる髪の毛を、左手で時折耳へかき分ける姿
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