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やがて、放課後。
バカップルの好奇の視線から逃れるために、足早に教室を抜け出した。
そして、俺には縁もないような図書館の前へと来ていた。
この引き戸を引けば当番のあいつがいるはず…!
当番まで知ってるなんて俺キモい。
深呼吸を何度もして、ガラガラと戸を引いた。
一歩踏み入れると、本の臭い。
酒やタバコの臭いに慣れている俺は少し顔をしかめた。
そして、コソッとカウンターの方を見た。
1年生の久保広太(くぼこうた)。
名前でも分かる通り、男だ。
サラサラした黒髪に小さめの顔。
顔立ちは普通の奴だ。
出会いは半年前の入学式。
職員室が分からない新入生を、面倒臭いからって職員室の方向を指差したとき。
こいつは笑って頭を下げた。
みんな俺が不良だからって遠巻きに見ているのに。
なんだか不思議な感じだった。
それが初めての恋だった。
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