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蟲が金切り声で咆える
傷口から紫色の体液が噴出した
しかし海斗はそれを浴びることはない
海斗の姿は〈サンドワーム〉の背中にあった
「蟲なんだろ? なら、まだ……見込みはあるよなっ」
まっすぐ振り上げた反り身の鋼鉄──刀を、その背に深々と突き立てた
そしてそのまま怪物の節くれだった体を走り〈サンドワーム〉の体を切り開いていく
最後のとどめに海斗は刀を横一門字に振りぬき、それで〈サンドワーム〉は息絶えた
「ふー」
動かなくなった巨大蟲の背から跳び下り、蟲の体液が滴る刀を左右に振ってから鞘に納める
チン、という小気味良い音が砂漠の熱さの中で涼しげに響く
日楼が産み出した鉄を切り裂く鋼のつるぎ、『刀』は異国の怪物にも変わりない切れ味を見せてくれた
正直海で錆びたかとも心配していたのだが、何よりだ
しかしここまで来るのにずいぶんと魔力を消耗してしまった
流石に風に乗っての長距離高速移動は無理があったようだ
まあ、何はともあれ。間に合ってよかった
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