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2人は喫茶店に入った。蜂は黙って向かい側に座る自殺屋を見た。
『で?聞きたいことってなんですか?』
『…自殺屋。お前か』
『・・・』
『まさか合コンにでてくるような奴だとはな。』
『…あなたは?』
『蜂』
『…あなたが蜂…。だから血の匂いがしたのね』
『なぜ内村を殺した。あれは俺の獲物だった。』
『先に殺ったもん勝ちよ。そんな業界でしょ?アタシタチ。』
蜂はフッと笑った。
『確かにな。お前みたいのが殺したんなら別にいいか。強かった?内村って奴。』
『全然。なんであんな雑魚が生きてて、アタシの母さんは…世の中理不尽だわ。』
『同感。』
『・・・』
内村はこいつの親の仇でもあったんだ。殺したくもなるだろうな。
『でも俺だったらもっと苦しませてから殺すかも。』
『充分苦しませたわ。お前は家族を殺した男だ、アタシの家族も自分の家族も。罪悪感と共に死んだはずだわ』
『面白いね』
『ありがとう』
『・・ただ俺は自分の獲物が他の殺し屋に取られるのはプライドが許さない。これから俺が君を狙わないとは限らない。』
『・・どうぞ。ご自由に。アタシはもうこの世に未練はないから。』
『・・・』
『もう…あらおうと思うの。』
そう言って自殺屋は席を立った。
『あアタシの事言わないでね、アタシもあなたの事言わないから。』
『あぁ了解。ありがとう。』
『サヨナラ』
『バイバイ』
自殺屋は喫茶店から出た。もう彼女と会うこともないだろう。忠告はした。肝の据わった女だ。笑える。しかし彼女はもうこの世に未練はないといっていた。あらうとも。もう殺しはしない気なのだろうか。
『殺しの…世界から足を洗うのか自殺屋…。』
できるのかそれが?
俺は?いつか消えるのだろうか?いつかは普通の暮らしができるのだろうか…?
『思いつかないな』
蜂は笑った。
『すいません。コーヒーください』
蜂はコーヒーを頼んだ。ここの喫茶店のコーヒーは美味しい。
俺もここの喫茶店も同じだ。明日はどうなるかわからない。喫茶店はなくなるかもしれないし、俺は死ぬかもしれないし。それは皆同じだ。
明日なんて誰にもわからない。
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