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「ふわああああ…はむ…む~…」
未だ眠りの世界に囚われている様な長い欠伸をしながら身体を起こす女性。
金色がかった美しい白髪は寝癖だらけだ。
寝相も悪いせいか着衣は乱れ、巨大な乳の片方がまろびでている。
こんなだらしない性格ながらも、幾多の男と関係を結び子供を生したのは、生来の美しさ故の事であろう。
その美貌と肉感的な肢体、なるほど黙っていれば世の男共が放って置かない程のレベルである。
しかし男は関係を結んだ後に皆去っていく。
いや、彼女の元から逃げていくのである。
それは恐らく彼女の性格と…激しすぎる多情故であろう。
彼女の求めに男共は皆身の危険を感じるのである。
彼女の名前は琥珀。
もうすぐ空狐の域に達する程の齢を重ね、天におわす神より狐族の長を任された、この世界に於ける妖怪の重鎮である。
そして上記の理由で未だ独身。
親友(と本人だけが思っている)の巳水妃が身を固めた事で殊更結婚願望が強くなってきている今日この頃である。
「ん~~~、美味しいでちゅか~?いっぱいい~~っぱい飲んで元気な子に育つんでちゅよ~」
そう言って先日生したばかりの子供に乳をあげる琥珀。
赤ちゃんの世話は彼女のこの社に於ける唯一の仕事といってもいい。
実質、狐族の管理をしているのは副官の伏見だし、社の管理を任されているのは竹駒、そして長じた子の養育をしているのは笠間に最上。
琥珀自体何もする事が無いのである。
だから暇を持て余して淫欲に耽るのかと言われればそれは違う。
彼女が淫乱多情なのは生来の性故である。
そんな存在がよくも天狐にと思うだろうが、彼女の本質は全き善であり、その能力(だけ)は巳水妃や乙姫も認めるものがある。
彼女の最も得意とするは封印。
かつて唐の国より渡りし悪狐を仲間と共闘しながら封じたのも彼女である。
まあ、のほほんぽややんとした外見からはとても想像出来ないだろうが。
英雄?色を好むの論理で天におわす神も彼女に狐族の長を任した訳で。
そんな琥珀も赤ちゃんに乳を与えてオシメを替えて眠らせれば途端に暇になる。
「む~~~、身体がウズウズするの~~!えっちしたいの~~!」
子供の教育に甚だ悪い台詞を呟く琥珀は伏見がいる仕事場へと向かった。
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