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その傍らの女性。
名は陽視(あけみ)。
常に目を瞑っているショートカットの妙齢な美女で、他人を寄せ付けない雰囲気を纏っている。
服装も柄が目玉だらけという奇妙な着物を着ている。
彼女は百目(ひゃくめ)である。
とある事件で一族は彼女を含めた三人だけとなった。
その悲劇の一族を巳水妃が保護したのである。
彼女と末妹の央花(おうか)は巳水妃が養い、次妹の陰視(かがみ)は王蛇の側仕えとなっていた。
それ故に陽視も今度の討伐令に心が落ち着かないでいた。
「大丈夫かと…思われます。彼の者はあの方の守護を得ている男の子ですから」
「うむ…」
陽視の励ましに頷く巳水妃であった。
竜宮へ乗り込む寸前、巳水妃達を呼び止める間の抜けた様な声。
「み~~ず~~き~~ちゃ~~ん、待ってよ~~!」
思わず顔をしかめる巳水妃。
友人、ではある。
あるのだが、彼女といると調子が狂わされてしまうのである。
その彼女はフワフワと浮遊しながら、近寄ってきた。
「もう~、水臭いよ~、巳水妃ちゃん。わたしを置いていくなんて…って、潮風が~~」
ずべたっ!
潮風に煽られて、浮遊しているにも拘わらず、砂地に顔から突っ込んで転ける女性。
それを見て、巳水妃は溜め息をついた。
「琥珀(こはく)…お主は底無しの運動音痴じゃのう。まさか空を飛んで、風に負けて転ぶ者がおるとは思わなかったぞえ?」
「た~~す~~け~~て~~!おっぱいが重くておきあがれない~~!」
そう言ってジタバタする女性。
「ハァ…もう少し身体を鍛えよ。お主、食って寝てヤるばかりじゃ筋肉が衰えていくぞえ?」
そう言いながら、陽視と共に女性を助け起こす巳水妃。
「運動してるもん~!この前巳水妃ちゃんに教えてもらった、おっぱいが垂れるのを防止するヤツとか~。あ、『さぷり』も飲んでるよ~。ぷえらりか、だっけ?」
口元に指を当てて答える女性。
「…こんな女がまさか狐族の頂点に立つ天狐とはのう…」
巳水妃の呟きに頷く陽視。
それ程、目の前の女性は天然で間抜けで色惚けだった。
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