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そして、竜宮へと入る三人。
それを出迎えたのは一人の男だった。
「これはこれは。よう参られた。相変わらず美しいですな、琥珀殿に…巳水妃」
公家風の白塗りを施した顔。
煌びやかな服装。
そして扇を口元に当てて微笑んでいる、如何にもお坊ちゃん然とした人物。
彼が龍神の龍巳(たつみ)である。
美形ながらも、どこかイヤらしさを漂わせていて、性格も陰険である。
巳水妃に惚れていて、乙姫も当初は息子の嫁にと願ったのだが、断られ続けて今に至る。
巳水妃の想いが王蛇に向いている事を恨みに思い、陰で色々と動いている男である。
「そんなに美しいのにまだ独り身とか。どうです、私の側室になられては?あ、正室の座は残念ながら巳水妃だけのモノですから…」
気障っぽい笑みを浮かべ、話す龍巳。
「あはは~、ごめんね~。わたしも男性を選ぶ権利があるから~。龍巳くんみたいな短小包茎下手くそ(以降罵詈雑言三分間)な子に嫁ぐつもりなんてとてもとても~」
「な…っ!私が短小包茎なんて根も葉もない…」
「え~?だって巳水妃ちゃんが言ってたよ~?」
「こ、これ!我はそこまで言うておらぬ!せいぜい、王蛇より小さいとか、童みたいに皮かむりとか、臭いのを我慢したとか…」
巳水妃の言葉に龍巳は涙目になって――
「う、うわああああんっ!巳水妃の馬鹿ぁぁぁぁっ!」
と、泣き叫びながら去っていった。
「馬鹿じゃと?フン、我を馬鹿呼ばわりする男に誰が嫁いでやるものか」
「巳水妃ちゃんって、ほんと策士だよね~」
琥珀の言葉に笑みを浮かべて頷く陽視。
「こ、これ!二人して我を悪者扱いするのかえ?」
「巳水妃様にしてみれば、今の言葉を楯にして、婚姻を断る口実を増やした、とそういう思惑なのではありませぬか?」
「むう…陽視はいつもそうやって我よりも心理的優位に立とうとする。昔はあんなに素直な娘じゃったのにのう」
拗ねる仕草をする巳水妃。
「巳水妃様の薫陶の賜物です」
「あ、そう言えばさ~。陽視ちゃんって、どうして伏見くんとの婚姻を断ったの~?身内贔屓かもしれないけど~、彼って陽視ちゃんとお似合いだと思うけどな~?」
琥珀の副官である伏見と陽視は以前お見合いをした。
上手くいくかと思われたのだが、陽視から断りを入れたのである。
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