序章:私自身でない私

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「あんなので驚いてたらあかんで。アレでも下級ゴーレムや。上級になれば硬度も増すし、特殊能力も付くんやで。」 足元のバロンを見るとこちらを見つめていた。 「そういや、名前を名乗る忘れとったな。」 下を見ながら、手で頭を掻き、再び見直しながら 「ワイの名前は、バロンちゅう者や、あんさんの名前は?」 「名前はウキだと思う。名前はコレしか覚えていない」 「そか、ウキっちゅう名前か。んでなウキ、聞きづらいんやけど、ギルドはもう決まったんか?」 ウキは、一度思案し直し決心した。 「俺には、どうしても守りたいモノがある。だからこそ、強さを手に入れたい…。」 気付けば拳を握り締めていた。 「どうしても強さが欲しい…!」 「そぉか、で、……少し言いにくいんやけどな……」 向こうを見る様に黄色い手(?)で指さした。 「どこのギルドもおらへん……で?」 「え……?ええぇぇ!?居ない!!どうして!?」 辺りを激しく見回し、ウキは狼狽し、バロンを掴み上げ、揺さぶりまくる。 「なんで居ないんだよ!?決心してさ!コレからの決意持ってさ!どうするんだコレ!?」 訳の解らない事を言いながら、バロンを揺さぶり過ぎた結果、 「あのさ、ピー太郎白目向いちゃってるよ?」 先程までバロンを抱いていた少女が失笑しながらそう言うと、直ぐにバロンを手放した。 「ごふぅ!?…コレが鶏の定めなんか……せちがらいわ…」 「いやいや、ピー太郎は鶏じゃなくてヒヨコだよ!」 地面に落ちたバロンを叩き、埃を落としてから抱きしめ直す。 「ワイ、ヌイグルミや無いんやけどな…んん…」 咳ばらいをし 「ものは、相談なんやけど。暫くの間、ワイのギルドで働かへんか?このままおったら、何も知らん合間に死ぬで?それは、ウキにとっても不本意の筈やないか?」 「でも、俺は…」 「大丈夫や。言ったやろ?暫くの間やって。後、色々と話さんといかん事もあるしな。」 そう言って手を伸ばしたバロンの手をウキは握った。 こうして、奇妙な世界で最も奇妙な住人達と遭遇したのだった。
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