2章:クロ

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この街ロストガーデンは、本来なら森に囲まれた美しい街だ。 しかし、降り続く雪のせいで、寒さに弱い作物や木々は枯れ果てて見る影も無い。   また地盤が緩く、適度に舗装をしてやらないと外に出歩く事さえ困難で、屋根の雪掻きに至っては住民達の日課となっている。 「……あー、寒い」 ザクザクと屋根から雪をおろしながら、ぼやいてみる。 口にした所で寒いのは変わりないし、雪が止む事も無い。けれども、ぼやかずにはいられない。 「……寒い」 はぁ…と、知らない内に真っ白な溜め息をついていた。   雪を下ろし終わって家の中に入ると、暖炉の前でシロが丸くなって眠っていた。   「この野郎……良い度胸だ」 クロはそろりそろりと近付くと、キンキンに冷えた両手を無防備な馬鹿(シロ)の首に押し当てた。 「ひょわぁぁああっっ!?」 奇声を上げながら、のた打ち回るシロ。テーブルの足や椅子等に、頭をガンガンぶつけているが、本人はそれどころでは無いらしい。
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