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「か、母さん!仕事はどうしたんだよ!」
予想通りだった。
「直ぐに犯人が捕まりましてぇ、私はほとんどすることがなくて帰ってきちゃったんですぅ。でぇ?浩さんたらぁ全くもぉ」
きっと年齢はそこそこだろうが、顔は大学生ぐらいでも十分通る。しかし言ってる可愛い内容と、そういいながら足で倒れている浩さんを蹴る行動が一致していない。
蹴られた浩さんは俺の身長(最後に計った時で百七十二だ)を軽々越え、二メートルくらい浮かび上がり、受け身がとれるわけもなく頭から落ちた。
いや、先ほどから思うのだがそんな細い手足からそんな力はどこから生み出されているのだろう。
人体って不思議。
「あらぁ?そちらの方はぁ?」
瑞穂さんのお母さんが俺を見ながら言った。
先ほどまで目に潜んでいた殺意は何処かへ飛んでいったのか、いやきっと待機しただけか。
だって未だに足を浩さんから退けていないから。
「あぁ、俺……ストっプ、手を下ろしてくれ母さん。ちゃんと直すから。わ、わたしも分かってないんだけど、里穂と色々あったみたいだぜ……です。ですです、ですを使います。で後こいつ」
下ろしていたよっちゃんを拾いに歩いていく。
「あの子は……なるほど、またやらかしたみたいですねぇ……テメェのガキぐらいテメェがしつけろってんだ。焦がされてぇのか……あらやだぁ、失礼しましたぁ」
オホホホと口に手を当てて誤魔化しても無駄です。
もう手遅れです。
瑞穂さんはしっかり血を受け継いでいるようだ。
恐怖に顔を歪めながら空を見た。
ここから見る空も、先ほどと変わらない。
まあ雲も、太陽も動いているけど、空そのものは変わらないのだろうか。
なんというか、この仲のよい親子を見て、昔を思い出してしまった。
空は、青い。
昔も、青かった。
風は、吹く。
昔も、吹いていた。
木は、揺れる。
昔も、揺れていた。
変わったのは、俺。
昔と違うのは、俺だ。
そんな想いを胸に、もう一度空を見た。
やはり、空は青かった。
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