見切り発車

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「安野、屋上はヤバイって」 1限目数学という名ばかりの授業のあと、屋上へ向かう安野にそう言うのは、同じクラスの音羽だ。 たまたま隣の席になっただけなのだが、よくしてくれるヤツだと安野は思う。 九条の下についていると聞いて、ああなるほどとも思った。 九条は優しいからな。 「なんで?だってタバコ吸うっつったら屋上だろうが」 何か、便所もいいがあんま汚ねぇとこは好きじゃないと安野は幾分頬を膨らます。 「だって、屋上っつったら3年の縄張りだしよ、」 音羽のめんたまってデケェな、安野は上の空だ。 そういう忠告を聞く耳がどうやらないらしく。 「君島さんたち居るし」 「うん、」 「安野」 「ちょっと場所借りるだけだろうが、」 「おい、」 「うん、うん、一本吸ったら戻ってくるし」 「オレ忠告したかんな!」 あいあい、と後ろ手に安野は手を振り教室をあとにする。 喧嘩から遠ざかったとて、かつて鬼神と言われた男だ。 誰がいようと退くつもりはない、そういう男なのだ。
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