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恐る恐る、ゆっくりと振り返るとそこには、タバコをくわえた男が涼香を見下ろしていた。
「―――」
その男を見た瞬間、涼香の思考はピシリ、と止まった。そして顔も口を開けたまま、固まってしまった。
「あぁ、何も言うな、喋るな、嘆くな、泣くな。言いたいことはわかってんだよ、コノヤロー」
そんな男の言葉は涼香には届かなかったが、涼香は今にも泣きそうだった。
「やってくれたな、クソアマァ。よくも、しやがったな、糞が」
しかしそんな言葉とは裏腹に男は少しも落胆した様子がなかった。
「―――まぁ、しかしよお嬢ちゃん」
そう言うと男はタバコを手にした方の腕を後ろにかかげると、タバコが燃え、炎が男の手の上に出現した。
「これで、お前を殺すしか、なくなった」
「―――!!」
あぁ、もうダメ。
私、死んだかも。
そこでようやく思考が動き始めたその時、目の前の男は、まるで遺言を聞くように、言い放った。
「ところでよぉ、ミディアムとレア、どっちがいい?」
1-1.end
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