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選んだ。 私は選んだ。 生きることを。 力を手に入れることを。 「魔法使い」になることを。 ―――なによ、こいつら――― ギースではないが、舐めるのもいい加減にしてほしい。 生きることを。 私が、生きることを。 ギースは言った…私が、魔法を使える、と。 断片は私の中にある。 ならば、魔法が使えるのは当然。 ―――だったら、応えなさいよ――― いつの間にか、思考を埋め尽くした絶望と混乱は綺麗に晴れた。 視界に映るのは、死神のような犬……では、ない。 橙色の―――線。 いや、川や布のようにも見える。 縦横無尽に走るその線は、まるで風のようだった。 …否、風そのものだった。 それが私には見える。 ―――私は――― 杖を力強く握る。 意識を、奥へ。 自らの奥の奥……まるで、自分が自分の中に堕ちていくようなイメージ。 ―――私は、死なない。 私は、まだ生きたい。 私は、生きる―――!! …その強き意志に応えたのか。 「―――風よ」 知らないはずの魔法を、言葉を、口にしていた。      
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