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「―――風よ」
【!?】
声が聞こえたのだ。
あの時は叫んでいただけなのに、今回は、何かが違う―――
そう悟ったのか。
犬たちがもう一度、一気にに襲いかかる。
「風よ、集え。台風となりて吹き荒れよ、我が暴風―――」
【詠唱…魔術!?】
涼香の目の前に風の塊が現れる。
「完成せよ……『荒ぶる暴風』!!」
瞬間―――その風の塊が膨張。ドンッという大きな音と共に塊が爆ぜ、強力な突風が吹き荒れる。
「うぉ!?」
その突風が犬たちに直撃―――周囲の壁や地面、電柱に勢いよく叩きつけられドシャリと力無く倒れた。
「はぁ…はぁ…」
立っているのは、たった2人。
離れた位置の電柱からそっと現れたギース。
そして満身創痍で杖を構えている早凪涼香だった。
がくがくと震え、肩で息をする涼香。
そんな涼香に近付くギース。
「おいクソアマァー。よくやったじゃねぇか。終わったぜ」
「……え…あっ!?」
その声に気がついたのか、フと我にかえった。
「あん?まさかテメェ…無意識に使ったのか?」
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