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呆然と目の前の光景に気付く涼香。
その様子を見ていたギースが不審に思ったのだ。
「わ、私がやった…の?」
瞬間―――身体の力が抜け、ペタリとそのまま地面に崩れ落ちた。
「そうだ。テメェがやったんだクソアマァ。やりゃあできるじゃねーか」
一応褒めているのだろうか。
しかし、先ほどまでギースが放っていた殺気は清々しいまで綺麗さっぱりなくなっていた。
どうやら魔法を発現させたことにより機嫌を直したようだった。
だが。
「…わからない…」
今ごろ恐怖が襲ってきたのか、消滅していく犬たちを座りながら見つめる涼香がポソリと呟いた。
「あん?」
「わからない…本当に…わからないの。ただ、もうダメだって思った瞬間…頭の中に文字が…うんうん。『声』が聞こえたの」
カタカタ肩を震わせながら告白する。
「『声』?」
「うん…そしたら、自然とその文章を口にしてた…ただ、それだけ…」
犬が消滅した後、何も残っていない虚無な影を見つめながら、思い返すように話した。
それを聞いていたギースはタバコを取り出し、口にくわえて火をつける。
深く煙を吸い、溜め込むとふてぶてしく夜空に向かって紫煙を吐いた。
「バカか、テメェ」
「―――え?」
…そんな動作から口にした言葉は、あまりに予想だにしていない、まさかの罵声。
若干パニックになりつつあった涼香の頭は、逆に真っ白になり一瞬固まってしまった。
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