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「ちょっ!?なんでバカって!?」
「五月蠅い、バカ」
「はぅっ!?」
目の前にしゃがむギースが面倒くさそうに頭をかきむしる。
「だから、テメェの中には、テメェを魔法使いにした大本の存在、『断片』があるだろうが。その断片に書いてある呪文をテメェが使っただけのことだ。そんなの謎でもなんでもねーよ」
「はぁ…」
「どんな魔法形態、術式が書かれてるかは俺にはわからねぇが、それが頭の中に『声』として流れ、魔法を発動させる詠唱となるんだろうよ。理解したか?」
「なんとなくは…」
…つまり。
涼香の飲んだ『断片』にあらかじめ魔法を使うための文章…詠唱呪文が刻まれており、それが頭の中に『声』として流れ、魔法を使役することが出来る―――というらしい。
頭がクリーンだったのが良かったようで、わりとすんなりと理解することができた。
そして考えることでようやく脳に熱が帯び、現実に戻ってきた涼香がギースの右腕を見てハッとする。
「ギギギ、ギースさん!」
慌てて右腕を掴む。
「あん?いきなりどうした?」
急に我に返った涼香に少し驚く。
「どうした…って!どうしたじゃないじゃん!その腕!血だらけじゃない!!痛くないの!?」
ギースの右腕を間近で見る。
傷は深くはなさそうだが、先ほどの犬に噛まれた箇所から出血が起きていたのだ。
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