12人が本棚に入れています
本棚に追加
/82ページ
「傷?あぁ、こんなのはカスリ傷さ。別に問題じゃねぇよ」
涼香を右腕から引っ剥がすと、右腕を前後に動かすギース。どうやら支障ないことを知らせようとするパフォーマンスなのだろう。
しかしそれを見てさらにビクッとなった涼香はもう一度ギースの腕を強く掴んだ。
否、捕まえた。
「問題ないわけないじゃん!ケガしてるんだよ!?血が出てるんだよ!?歯形がクッキリついてるんだよ!?どどど、どうしよう!?」
オロオロと落ち着かない涼香は周りをキョロキョロ見渡す。
「……いや、何をオロオロしてるか知らねーが…とりあえず離れろクソアマァ」
タバコを口にくわえながら、左手で涼香の顔を押しのける。
それに抵抗するようにガッシリとギースの腕に捕まっていた。
「だぁぁっ!めんどくせーアマだなぁ!こいつは!!そんなに心配なら治癒魔術でも使うか!?」
その単語にピタリと抵抗が止んだ。
「え?治癒魔術?誰が?」
「俺様だ」
自信たっぷりに自らを指差すギース。
「………」
そんなギースの自信を更なる疑心の目で見つめる。
「…おいクソアマァ。なんだその目は。まるで信じてねーな、オイ」
「だってギースさん。ギースさんだよね?ギースさんが治癒とか…ぶっちゃけキャラが合いません!」
そもそも、ギースと知り合ってからまだ1日しか経っていない。
が、今までの言動や行動から涼香の中ではある程度のギースのキャラクター性が作られており、
勝手ながら治癒魔術はギースに合わないと本心で思ったのだ。
「ほー、あ、そー。テメェの中の俺のキャラはどんなのかは知らねーがな。そーいう態度をとるか。とるんだなチクショー。あぁ糞!ブチ殺していいか!?」
ジジジ…とタバコの先が一気に灰になっていく。
「ぷふっ…ご、ごめん!ちょっと想像しちゃった」
涼香がイメージしたのは怪我人を天使のごとき慈愛の眼差しで治すギースの姿…。
似合わなすぎて思わず笑みがこぼれた。
…だが、確かにこのイメージは…似合わない。
「よぉぉし!わかったぜクソアマァ!よぉく見てやがれ―――俺の治癒を!!」
ついにキレたようで、涼香を払いのけると右腕に左手をかざす。
最初のコメントを投稿しよう!