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「傷?あぁ、こんなのはカスリ傷さ。別に問題じゃねぇよ」 涼香を右腕から引っ剥がすと、右腕を前後に動かすギース。どうやら支障ないことを知らせようとするパフォーマンスなのだろう。 しかしそれを見てさらにビクッとなった涼香はもう一度ギースの腕を強く掴んだ。 否、捕まえた。 「問題ないわけないじゃん!ケガしてるんだよ!?血が出てるんだよ!?歯形がクッキリついてるんだよ!?どどど、どうしよう!?」 オロオロと落ち着かない涼香は周りをキョロキョロ見渡す。 「……いや、何をオロオロしてるか知らねーが…とりあえず離れろクソアマァ」 タバコを口にくわえながら、左手で涼香の顔を押しのける。 それに抵抗するようにガッシリとギースの腕に捕まっていた。 「だぁぁっ!めんどくせーアマだなぁ!こいつは!!そんなに心配なら治癒魔術でも使うか!?」 その単語にピタリと抵抗が止んだ。 「え?治癒魔術?誰が?」 「俺様だ」 自信たっぷりに自らを指差すギース。 「………」 そんなギースの自信を更なる疑心の目で見つめる。 「…おいクソアマァ。なんだその目は。まるで信じてねーな、オイ」 「だってギースさん。ギースさんだよね?ギースさんが治癒とか…ぶっちゃけキャラが合いません!」 そもそも、ギースと知り合ってからまだ1日しか経っていない。 が、今までの言動や行動から涼香の中ではある程度のギースのキャラクター性が作られており、 勝手ながら治癒魔術はギースに合わないと本心で思ったのだ。 「ほー、あ、そー。テメェの中の俺のキャラはどんなのかは知らねーがな。そーいう態度をとるか。とるんだなチクショー。あぁ糞!ブチ殺していいか!?」 ジジジ…とタバコの先が一気に灰になっていく。 「ぷふっ…ご、ごめん!ちょっと想像しちゃった」 涼香がイメージしたのは怪我人を天使のごとき慈愛の眼差しで治すギースの姿…。 似合わなすぎて思わず笑みがこぼれた。 …だが、確かにこのイメージは…似合わない。 「よぉぉし!わかったぜクソアマァ!よぉく見てやがれ―――俺の治癒を!!」 ついにキレたようで、涼香を払いのけると右腕に左手をかざす。
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