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星桜高校の校門。その柵をなんらく乗り越え、早凪涼香とギースは高校敷地内に侵入していた。
チラリと校舎に目を向けると、幸いにも生徒の姿は見えず、明かりがついているのは1階―――職員室くらいなものだった。
(これなら第2校舎からグラウンドを抜ければ、見つからないで…)
行けそうだと。涼香はギースの右腕を掴んだまま考えていた。
「……おい」
フッ…と、隣りの男が話しかける。
「はい?」
「いや、そんなマヌケな顔をされても困るが…いい加減、腕を離せ」
腕を掴まれた男…ギースの不満はもっともだった。
先ほどの戦いで負傷した右腕…
その腕を「自分に手当てさせてください!」…と言って学校に忍び込んだ、のは良い。
良いのだが―――
その間ずっと全身で右腕を掴んでいるのはどうかと思う。
「大丈夫です!もう少しで保健室なので!」
「いや、大丈夫って…」
何が?
―――と怒鳴りたくなったが、ギースもわりと疲れていたのだ。主にキレすぎで。
だからあえて何もいわなかったのだ。
「いや、だからと言ってもよぉ」
「むっ。なんですか?」
身体を密着させて聞いてくる涼香。
「何が悲しいかって、テメェのペチャパイ具合だな。嘆かわしいぜ…抱きつくならもっと発育の良いカラダの女が良かったのによぉ…」
「―――っ!?」
本気で落胆するギースとその余りのセクハラ発言に動揺する涼香。
「ななな、何言ってるんですか!!む、胸って!ふ、ふーんだっ!私の胸だって今現在成長中なんだからね!来年にはばいんばいんになってるよ!」
なにやら幼稚くさいセリフで抗議しているが、そんなことを言っている間は絶対ばいんばいんにはならない…と静かに思うギース。
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