1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
俺は咄嗟に剣を抜いて、斬りかかっていた。
カイムも軍人。突然の事に驚いたものの、ギリギリで剣筋を読みギリギリで交わす。
「…びっくりしたぁ」
俺の剣は避け損ねたカイムの髪だけを少し斬っただけで、地面に突き刺さった。
頭に血が上り、身体が動くままに行動した。
後の事なんて考えてはいなかった。
両親の仇が目の前に居る。それだけで、頭が真っ白になり何も考えられなかった。
やつを斬る。
それだけだった。
もう、こんなチャンスは来ないだろう。
折角のチャンスを潰してしまった。
隙をついて騎士達は、俺を地面に押さえつける。
剣も取り上げられた。
カイムは護衛騎士に護られる様に囲まれ、俺を見下ろしていた。
「…君は?」
「あんたは、俺の両親の仇だ」
身体中に黒くて泥々した物で満たされていく。
両親を惨殺された日以来、俺の心に芽吹いた憎しみの感情。
この時だけは、視線で人が殺せたら…!と本気で思う。
俺を見ていたカイムの顔に影が落ちる。
「…名前は?」
「………」
黙って居ると、殴られた。
口の中を切ったのか、血の鉄の味が口の中に広がる。
「止めなさい。……君はあの辺境の村の……あの時の男の子だね」
直ぐにわかったよ、とカイムは瞳にを伏せた。
「なぜ両親を殺した!」
噛みつく様に言うと、「密命だったんだよ…」、言い訳にしか君には聞こえないだろうけど…と付け加えて答えた。
「密命…!?なんの……」
「秘密の命令だから密命って言うんだよ?」
カイムは腰を落とし、俺の目をじっと見た。
そっと優しく頭を撫でられ、俺はそれを頭を振り拒否した。
スッと立ち上がり、カイムは俺を押さえつける騎士達を退くように促す。
「カイム様、何を?」
護衛騎士の一人がカイムを制止する。
まぁ、そうだろうな。
カイムを護るのが彼らの仕事なんだから。なのに、そのカイムが俺を解放しようとしているのだから。
「彼と二人っきりで話がある」
「ですが…」
護衛騎士が口ごもる。カイムの鋭い視線に怯え、それ以上は言わなかった。
「13年前の―……真実を話そう。信じるか信じないかは話を聞いてからだよ」
俺は武装解除され、促されるまま城内にあるカイムの執務室に連れて行かれた。
最初のコメントを投稿しよう!