episode-①

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俺は咄嗟に剣を抜いて、斬りかかっていた。 カイムも軍人。突然の事に驚いたものの、ギリギリで剣筋を読みギリギリで交わす。 「…びっくりしたぁ」 俺の剣は避け損ねたカイムの髪だけを少し斬っただけで、地面に突き刺さった。 頭に血が上り、身体が動くままに行動した。 後の事なんて考えてはいなかった。 両親の仇が目の前に居る。それだけで、頭が真っ白になり何も考えられなかった。 やつを斬る。 それだけだった。 もう、こんなチャンスは来ないだろう。 折角のチャンスを潰してしまった。 隙をついて騎士達は、俺を地面に押さえつける。 剣も取り上げられた。 カイムは護衛騎士に護られる様に囲まれ、俺を見下ろしていた。 「…君は?」 「あんたは、俺の両親の仇だ」 身体中に黒くて泥々した物で満たされていく。 両親を惨殺された日以来、俺の心に芽吹いた憎しみの感情。 この時だけは、視線で人が殺せたら…!と本気で思う。 俺を見ていたカイムの顔に影が落ちる。 「…名前は?」 「………」 黙って居ると、殴られた。 口の中を切ったのか、血の鉄の味が口の中に広がる。 「止めなさい。……君はあの辺境の村の……あの時の男の子だね」 直ぐにわかったよ、とカイムは瞳にを伏せた。 「なぜ両親を殺した!」 噛みつく様に言うと、「密命だったんだよ…」、言い訳にしか君には聞こえないだろうけど…と付け加えて答えた。 「密命…!?なんの……」 「秘密の命令だから密命って言うんだよ?」 カイムは腰を落とし、俺の目をじっと見た。 そっと優しく頭を撫でられ、俺はそれを頭を振り拒否した。 スッと立ち上がり、カイムは俺を押さえつける騎士達を退くように促す。 「カイム様、何を?」 護衛騎士の一人がカイムを制止する。 まぁ、そうだろうな。 カイムを護るのが彼らの仕事なんだから。なのに、そのカイムが俺を解放しようとしているのだから。 「彼と二人っきりで話がある」 「ですが…」 護衛騎士が口ごもる。カイムの鋭い視線に怯え、それ以上は言わなかった。 「13年前の―……真実を話そう。信じるか信じないかは話を聞いてからだよ」 俺は武装解除され、促されるまま城内にあるカイムの執務室に連れて行かれた。
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