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episode-①
俺はあの日からカイムに復讐する事を誓い、剣を取った。
15歳で軍の養成所に入り、いくつもの隊を渡り歩き今は最前線で戦う部隊に配属されている。
両親を亡くした日から、感情が死んでしまったかの様に無表情が板についてしまっていた俺はいつも独りだ。
どの部隊でも友人は作らず、常に両親の復讐の為に剣を振るう。
やつを仕留める為にはもっと力をつけなければ…
色々な部隊を渡り歩いている間にカイムの情報はだいぶ増えた。
少年兵士とは幼い少年ばかりを集め、感情も殺し精鋭に育て、いずれはエリート騎士になる者達の事で、カイムはその中でもトップだと言う。
カイムには特別に直属の部下を持ち、軍からの密命を遂行するのを生業としていた…らしい。
しかし最近になって、騎士を引退したと噂が流れた。
「整列!」
今期から俺は帝都にある本隊へと転属された。
今日は隊員の確認や、新たな上官が紹介される事になっている。
城内に本隊は配置され、主に城の警備や城下町の見廻りが普段の仕事だ。
正装姿の騎士達に混じり、俺を含め数名の兵士が軍団長の掛け声にならい横一列に並ぶ。
「敬礼!」
バッと一斉に敬礼する姿はいつも思うのだか、躾をされた犬の様で嫌いだ。
「ようこそ諸君。今期から君達は我が本隊への転属が認められた。言わば英雄にまた一歩近づいたわけだが~…………」
……………………話が長い。
うんざりだ。地方から帝都まで旅して来た俺は正直眠かった。
気が緩み、つい…
「…ふ、ぁあ~…」
あ。
すると背後からクスクスと笑い声が聞こえて来た。
「ほらぁ、軍団長さんの話が長いから彼、退屈そうですよ?」
靴音高らかに歩いて来るその人はとても長身で細身、服もふんわりとしていて歩く度にヒラヒラと波打つ。
純白のローブにとても栄える紅い髪が一同の視線を釘付けにした。
『純白』に『紅い髪』
「…………カイム」
俺は自然と忌々し記憶に残る男の特徴と今、目の前を優雅に歩く男の姿を重ね合わせて見ていた。
まさか、こんな所で…
「ん?私を知っているのか…そうだ、私がカイムだよ。宜しく…って、わぁ…!」
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