03.灰色スパイス

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きっと彼は不安だった。失明して、真っ暗だからとかそうじゃない、ただ不安でたまらないような、そんな瞳をしていたように感じる。 あの後、彼――綱吉は慌てたようになみだを拭いて「あれ…へんなの、なんでこんなにわからないんだろ」とか「はやく思い出したいのに」とか、そんなことばっかり言っていた。綱吉自身は気付いていないだろうが、僕が雲雀恭弥に「六道」と呼ばれた瞬間の綱吉のかおは、ひどく苦しそうにみえるほど、つらそうで。それに、雲雀恭弥は気づいていたと思う。南国パイナポーの時点からわざとやっていたはずだ。それはつまり、僕と綱吉がどうなろうが雲雀恭弥にとってどうでも良いこと、ということになる。 だから嫌いなのだ。かれは敏感だから、最初からわかっていてやっている。アルコバレーノお得意の読心術でさえ簡単にはよめないはずの僕の考えだって、いつでも雲雀恭弥にはお見通しなのだ。 たまらなく悔しいが、それでも心のどこか目を眩ませないと見えないくらい小さなところで、それをうれしいと感じている自分がいることに、しんでしまいたいくらいの羞じらいと吐き気を覚えたことは、流石に誰にもよまれていないと良いが。
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