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気付いたときから一緒だった。自分のアルバムに挟まれているそれには、きまって彼が写っていた。
彼とは幼なじみだった。勉強も運動も、何でも出来る彼と何も出来ないおれとじゃ釣り合わないなんてこと小さいころから自覚していた。それは幼かったおれたちの、ある日までさかのぼる。
「やーい、ダメツナー」
「うっ…」
「ダーメツナ!ダーメツナー!」
「ふええぇえ…!だ、だめつななんかじゃないもん!」
その日もいつも通りいじめられていた。何も出来ないうえ、どちらかといえば決まって失敗をするおれはいつからかダメツナ、と呼ばれるようになっていた。もちろん気に入ってるわけがないのだが、複数もいるいじめっ子たちに楯突いて勝てる自信なんかひとりぼっちの綱吉には毛頭無かった。
「……なにしてるんですか」
不機嫌そうな声。誰もが怯むかのような、本来子供が出せるわけもないくらいの冷たい声色なのに、綱吉は怖がる素振りも見せぬままその男の子に抱き着いた。
「むっくん!!」
「…つなよし、ここではその呼び方はやめろと――」
いいませんでしたか、と続くはずの言葉が途切れた。なんで、なんて考えるだけ無駄なくらいで。綱吉の柔肌に、しろいきれいなはだに、赤い血。このいたいけな少年には似合わない、血が流れていた。そこをずっと見ていれば綱吉は焦ったように笑う。
「ねえ、だいじょうぶだから」
なにが大丈夫なんだ目に涙を浮かばせているくせに、なにが大丈夫なんだ、こんな…こんな血は綱吉には似合わない。こんなの、ああ、どうしよう、なんて悩む前に薄々気付いていた。この傷はこいつら(いじめっ子たち)に突き飛ばされた際に転んで、そのときに負ったのだろう。いくらかすり傷とはいえ、綱吉の体に傷をつけた罪は重い。骸は心底いじめっ子たちを恨んだ。
「消えろ、」
このように、彼――骸は優しさも持ち合わせている。勉強もできて運動もできて、オマケに『優しい』なんてオプション付き。褒めているのだ、いまおれは、骸を。しかしそれは嫌味でしかない。モテモテな骸が、女の子たちをきつく拒むのは、『優しい』からなんだろ。優しく接して、期待して玉砕して落ち込むのは女の子のほう、だから最初からきつく当たっているんだそうに違いない。だから優しいのだと言うのに。
綱吉は恨めしそうに骸を睨んだ。骸にひっつく女子たちのことも睨んだ。醜い嫉妬が、綱吉の中を駆け巡った。
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