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愛想を尽かされただろうか、それとも最初から本気なんかじゃなかったのか。
ドン・ボンゴレ沢田綱吉は溜息を吐いた。
まさか、まさかあの人だけは。アイツだけはと思っていた暁に、だ。戸惑うばかりで言葉が出てこない、そう、まるで生まれたときその瞬間から言葉を知らなかったような、そんなふうに感じた。いやらしいほどの色気を漂わせる自分の恋人が、いついかなるときも自分を愛してくれていた恋人がいまはもう隣にいないなんて。綱吉には考えられなかった。
「僕はもう、きみがマフィアだろうが何だろうが、人間じゃない…たとえればハムスターだったとしても、とてもきみを愛さずにはいられないのです」――脳裏に過ったそれをぐしゃぐしゃにして、ごみばこに捨ててしまいたかった。こんなつらいなら心ごと捨ててしまえれば、どんなに楽だろうなんて考えている自分に鳥肌が立った。俺は、俺は今、何て――…思い出すよりはやく行動にうつしていた。もちろん、無意識にである。あーもーそんなこと知ったこっちゃない、というように笑みを作った綱吉に止める術なんて知るはずもなかった。
そう、手首に赤い筋が這ってゆくのを、ただなにもすることがないままに見つめていた。(ああ、俺はお前がいなくちゃだめなのに)お前は違ったんだね、と涙をこらえる自分がどうしようもなく情けなかった。
情けなかったんだ、
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