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2007年・梅雨
「芙美(ふみ)への気持ちがなくなった」
2007年、6月。
約3ヶ月付き合った雄一郎と別れた。
正直、私は付き合いはじめて2週間で気持ちが醒めていた。
でも、彼に別れ話を出されるまで耐えていたのは、19歳の自分がフリーになることが何より嫌だったからだ。
気持ちよりプライドを優先していたあたり、私も大概青かった。
だけど、よっぽど彼が嫌いだったのか、私は当時の事を実はよく覚えていない。
「ん、わかった。
…そんな予感はしてたよ。」
確かそう言って名鉄名古屋駅の改札口に入っていった気がする。
改札口に飲み込まれる定期とともに、苦しかった3ヶ月が消えさった気がした。
勿論別れ話が始まってから雄一郎の顔なんて一度も見ていない。
ホームに降りると電車が丁度停車していた。
引き寄せられるように乗車し、空いていた席に座ると、大きなため息がでてきた。
(やっと終わった…)
私は心底ホッとしていたのだ。
仮にも3ヶ月付き合っていた彼に、ほんの一瞬申し訳ない気持ちにはなったが、正直、彼が高校時代に起こした"全世界の女を敵にまわす程の最低な事件"よりマシだ。
とにかく、じめじめした季節に、人生で二人目の彼氏と別れた。
雄一郎は、22歳になった今でも、私の人生で一番消し去りたい人間だ。
でも、雄一郎と別れられたおかげで、私は生まれて初めて、"愛"の意味を教えてくれる相手に巡り会えた。
いや、正確にいうと、既に巡り会っていたの。
雄一郎と知り合ってすぐの頃…、2007年の3月に。
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