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いつものように就業時間がやってくる。
帰る用意をしていると、隣の席の三田村が瑠依に声をかけた。
「瑠依ちゃん、これから時間ある?」
「あ、ごめんなさい。今日は美穂さんが先約ですー」
「ちぇー。美穂さん、最近瑠依ちゃんのこと独り占めし過ぎですよ」
三田村は恨めしそうに自分の席の前にいる美穂を見た。
「ザンネンだったねー三田村。あたしの瑠依を誘おうなんて100年早いわよ」
美穂はふふんと鼻で笑って席を立ち、出力機へ移動して行った。
「ホント、美穂さんって瑠依ちゃんのこと好きだよな。瑠依ちゃん、このままじゃ彼氏もできないよ?」
「いいんですー。あたし、美穂さんと一緒にいるの、好きだし」
瑠依はくすくす笑ってバッグを抱えなおした。
「三田村さん、今度みんなで飲みに行くときはご一緒しますんで」
「みんなと一緒、かよ。冷たいなー」
苦笑する三田村に小さく頭を下げて、出力機から戻ってきた美穂に向かって微笑む。
「美穂さん、あたし先に化粧直ししてきますー」
「わかったー。すぐ行くから待っててー」
美穂の返事を聞いた瑠依は、お疲れ様でしたーとフロア全体に声をかけ、事務所を出て行った。
「三田村、瑠依に手ェ出すんじゃないよ? あたしが許さないからね」
にっこり微笑みかける美穂の笑顔は、恐ろしいほど笑っていなかった。
三田村はこっそり肩をすくめてPCのモニターに視線を戻した。
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