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「アスミは、犯人捜しなんか止めてくれって言った。
早く事件を忘れたかったのか、僕の事を心配してくれたのか、分からないけど・・・。
けれど僕は止める事が出来なくて、でも、犯人は見つからなかった。」
蒼白い僕の拳に、ベルの指が優しく触れた。
「僕は、犯人を見つけられない自分に腹を立てた。
アスミに申し訳がなくって、なのに僕は何故だか、犯人捜しを止めてと言った彼女を、責めてしまった。
彼女は、僕が犯人捜しを始めた頃から、僕と距離を置くようになっていって、いつの間にか、2人の心は、離れてしまった。」
そう。悪いのは僕なんだ。
僕も他の人間と変わらない、自分の事ばかりが大事な、ただのクダラナイ存在だった。
あまりの後悔と無力感。
涙も出やしない。
「考えてみれば、猫が一匹死んだだけのことなんだ。それだけで僕とアスミはバラバラになってしまった。」
「だから車を避けなかったんですか?」
死んでもいいと思ったのか?
ベルはそう聞きたかったのだろう。
その声は少し怒っているようにも聞こえた。
「・・・それだけじゃないさ。大きな一因では有るけど、色々と、愚かな人間達の、クダラナイ社会そのものに嫌気がさしていたのかもね。」
「それは言い訳です。
つまりはヒロトさんが負けてしまっただけだと思います。」
ベルはきっぱりと言い切った。
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