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「大丈夫です。」
僕の様子を見ていたベルが、柔らかな口調で、けれどキッパリと言った。
この娘は、見かけによらず物事をハッキリと言い切る。
それが、不思議な説得力を生んでいた。
「アスミさんは、きっと悲しんで、自分を責めると思います。
確かに、人間はそういうマイナスの感情に易々勝てるほど強くはありません。
でも、必ず負けてしまうほど弱くもありません。」
ベルは僕の頬に手を伸ばし、無理やり顔を動かして、目を合わせると、
「もしも、ヒロトさんが、アスミさんが負けないように願うなら、そう強く強く想う事をお勧めします。
そしてあとは、アスミさんを信じてあげましょう。・・・ね。」
そう言って、ウインクして見せた。
僕はまた、その場にへたり込んだ。
そして目の前にいる、死者を導く真っ白な羽の少女を、もう一度見つめた。
彼女も、優しい微笑を浮かべたまま、黄金色の瞳を僕に向けている。
この少女は、その黄金の瞳にどれだけの命の終わりを映してきたのだろう。
まったく天使なんだか、死神なんだか、とにかく・・・。
「ベル。」
「はい?」
「ありがとう。キミは素敵だよ。」
僕の台詞に、ベルは何も言わず、ポッと頬を赤らめた。
「あーあ。」
僕はそのまま後ろに、ごろんと寝転んだ。
「猫は猫で大変だったけど、人間は人間で、やっぱり大変だったなぁ。」
僕の、感想ともボヤキともつかない言葉に、ベルが『ぷっ』と吹き出した。
「では。そろそろ行きますね。」
そう言うとベルは、チリチリと鈴の音をさせて、僕から2・3歩遠ざかり、ゆっくりと羽を広げ始めた。
「ああ。ありがとう。」
僕は、もう一度、礼を言いながら、座り直した。
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