《エピローグ》

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「ねえベル、最後にもう一つだけ聞いてもいいかな。」 「はい。何でしょう?」 ベルは、最初に会ったときのように、にっこりと微笑んだ。 「キミはさっき、僕が人間になったことに、『おめでとう』って言ったね。本当にそう思うかい?」 「はい。」 ベルは、いつもの静かな、けれどハッキリした口調で答えた。 「願いが叶うほど強い想いを持てることは、それだけで素晴らしいと信じています。 それに・・・、 人間、永音博斗の生きた時間は、決して無くてもいいものではなかったと、私は思います。」 僕は、ポロポロと涙がこぼれるのを、止められなかった。 「また、人間になりたいですか?」 ベルがそう聞いてきたので、僕は逆に訊いてみた。 「そう願ったら、叶えてくれる?」 「私にはそんな力は有りません。」 ベルは真面目顔で答えた。 「でも、もし願うのなら、強く想うことをお勧めします。」 僕の想いは決まっていた。 「猫になるよ。」 そして、真っ白な、低いのか高いのか判らない天を仰いで、句切り、句切り、ゆっくりと声に出した。 「もしも、願いが叶うなら、 黒猫になって、もうしばらく、 アスミを、見守っていたい。」 「その願いが叶う事を、私も願っています。 では。」 それだけ言うと、ベルは、真っ白な翼を音も無く羽ばたかせて、飛び上がった。 僕は彼女を見送ろうと立ち上がったが、その眼に映る彼女の姿も、僕の記憶も・・・、 何もかもが、あっという間に、白い霧のようなものの中に消え去り・・・、 『リン・・・。』 澄んだ、微かな鈴の音だけが、いつまでも鳴っていた。 まるで、僕の想いを乗せて、響き渡るように。 キミにも聞こえるかい? アスミ・・・。image=345675064.jpg
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