《天使のような少女》

3/13
前へ
/17ページ
次へ
この少女に、どこかで会ったことがある。 そう感じたのだ。 『誰だっけ?』 まじまじと見ている僕に対して、彼女はにっこり微笑んで、話しかけてきた。 「こんにちは。」 「あ。ああ、はい。こんにちは。」 声が裏返った。 「ごめんなさい。驚かせちゃいましたね。」 彼女は申し訳なさそうにそう言ったが、僕の慌てている様がよほどおかしかったのだろう、笑いをこらえているのがよく判った。 僕は少しムッとして答えた。 「ああ、驚いたとも。車にでも轢かれたかと思ったよ。」 「あら。」 彼女は、目をまぁるく開いて見せ、黄金色の瞳をキラリと輝やかせた。 どうやら驚いたということらしい。 「もしかして、状況、大体把握してます?」 「は?」 彼女の尋ねた意味が、すぐには理解できなかった。 『状況? 何のことだ・・・? 今の状況・・・。 目の前の天使・・・。 どこだか判らない、白い場所。 西日が眩しくて、車が・・・。』 「あ!!」 急に頭がぐるぐると回転しだし、 目眩がした。 「大丈夫ですか?」 我に返ると、彼女が、座り込んだ僕の身体を支えていた。 恥ずかしいことに、ひっくり返ったらしい。 「だ、だ、大丈夫。 ちょっと急に、すごい、なんだ・・・、 眠くなっちゃって。」 あたふたして、立ち上がりながら、よくわからないことを言っている僕を、彼女は心配そうに見ている。 わずかな沈黙が流れた。 僕は、大きく深呼吸をして気を落ち着かせると、自分に確認するように、呟いた. 「僕は、死んだのか。」 「はい。」 別に、返事を望んではいなかったのだが、彼女からは、キッパリとした答えが返ってきた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加