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この少女に、どこかで会ったことがある。
そう感じたのだ。
『誰だっけ?』
まじまじと見ている僕に対して、彼女はにっこり微笑んで、話しかけてきた。
「こんにちは。」
「あ。ああ、はい。こんにちは。」
声が裏返った。
「ごめんなさい。驚かせちゃいましたね。」
彼女は申し訳なさそうにそう言ったが、僕の慌てている様がよほどおかしかったのだろう、笑いをこらえているのがよく判った。
僕は少しムッとして答えた。
「ああ、驚いたとも。車にでも轢かれたかと思ったよ。」
「あら。」
彼女は、目をまぁるく開いて見せ、黄金色の瞳をキラリと輝やかせた。
どうやら驚いたということらしい。
「もしかして、状況、大体把握してます?」
「は?」
彼女の尋ねた意味が、すぐには理解できなかった。
『状況?
何のことだ・・・?
今の状況・・・。
目の前の天使・・・。
どこだか判らない、白い場所。
西日が眩しくて、車が・・・。』
「あ!!」
急に頭がぐるぐると回転しだし、
目眩がした。
「大丈夫ですか?」
我に返ると、彼女が、座り込んだ僕の身体を支えていた。
恥ずかしいことに、ひっくり返ったらしい。
「だ、だ、大丈夫。
ちょっと急に、すごい、なんだ・・・、
眠くなっちゃって。」
あたふたして、立ち上がりながら、よくわからないことを言っている僕を、彼女は心配そうに見ている。
わずかな沈黙が流れた。
僕は、大きく深呼吸をして気を落ち着かせると、自分に確認するように、呟いた.
「僕は、死んだのか。」
「はい。」
別に、返事を望んではいなかったのだが、彼女からは、キッパリとした答えが返ってきた。
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