《天使のような少女》

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「先日交通事故で、お亡くなりになりました。」 ご丁寧にも手を合わせて僕を拝んでいる。 「はは・・・は。」 僕は力なく笑ってみせた。 無表情のまま・・・。 「そうか、死んだのか。」 衝撃的な事柄には違いなかったが、 けれど、自分でも驚くほどあっさりと受け入れることが出来た。 残念とか、悔しいとかいう想いは浮かんでこない。 「アスミは悲しむかな?」 ふと、付き合っている彼女の顔が思い出された。 職場の同僚の、ヒダカ 高校の恩師、ツヤマ先生。 小学生以来の友人、シンイチ。 人間、死ぬ間際に、走馬灯のように人生を思い出すって言うけど・・・、 死んだ後でも思い出すんだなぁ。 僕はなんとなくおかしくなった。 彼女は、僕のことを黙って見ている。 きっと、アホのようにニヤニヤして、気持ち悪いヤツだと思っているんだろう。 死んでしまったおばあちゃん。 よくおんぶされて、保育園に送り迎えしてもらったっけ。 若い頃の母親。 僕がまだ赤ちゃんの頃だ。 覚えてるんだなぁ。そんな昔の事まで。 今度はなぜか、涙が浮かびそうになって、うつむいた。 確かに気持ち悪いヤツだ。 自分でもそう思う 彼女が僕の顔を覗き込むように、動いた。 服のどこかに着けているのだろう、 「リン。」 と鈴の音がなる。 そして僕が生まれる・・・前? 「!!」 「きゃっ。」 突然顔を上げた僕にびっくりして、彼女が一歩後じさる。 そのまま見つめ合った。image=345674674.jpg
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