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『ホント、薫って女優になれば良かったんじゃない?』
仕事帰りのファミレスで食事をする私の目の前に座る倉田ユキが言う。
彼女は私の高校時代からの友達。
『やっぱそう思う? でもいいの、それを仕事にするつもり無いもん』
ドリンクバーから持ってきたカプチーノに口をつけそう言うとユキが聞いてきた。
『で、誰かよさげなの見つけた?』
『うん、まぁ。企画部にさ、35歳の係長がいてまだ独身なんだよね。
聞いた話じゃバリバリ仕事しててこの先部長の席に座るんじゃないかって』
『へぇ~。35歳で独身かぁ。なんでその歳まで独身なんだろ?』
『仕事し過ぎてチャンスが無かったんじゃないの? つーか、この髪が邪魔っ』
鎖骨あたりまである髪が顔に纏わり付きイラッとくる。
バッグの中を探すと、こういう時に限って何も無い。
『ねぇ、ユキ、輪ゴム持ってない?』
『は? 輪ゴム?』
ユキもバッグの中をごそごそと探し出した。
『あはっ、あった。凄くない? なんで入ってんのか知らんけど、ドラえもんのポケットみたいだと思わん?』
差し出された輪ゴムを受け取り、それで髪をひとつに束ねた。
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