最後のくちずけ

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深夜の病院はひんやりとしていて、物音ひとつしなかった。 沢山の人が入院して、沢山の看護師さんがいるはずなのに、病院内は冷たい空気と恐いくらいの静寂に包まれていた。 SEIの両親は病院へ着いて直ぐに、看護師さんに連れられ何処かへ行ってしまった。 アタシは親族ではない。 だから病院の長椅子に座って、待っていた。 静かな院内に、雨音だけが耳に残る。 アタシは取り乱すことも、涙を流すこともなかった。 事態をうまく飲み込めないまま、アタシはこの広い病院で一人ぼっちな気がして、そっちのほうが不安だった。 ―SEI。大丈夫だよね…? アタシはぼーっと窓の外に咲く、北国の遅い開花の八重桜の花が、雨に打たれて散っていく様子を眺めてた。
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