0人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
深夜の病院はひんやりとしていて、物音ひとつしなかった。
沢山の人が入院して、沢山の看護師さんがいるはずなのに、病院内は冷たい空気と恐いくらいの静寂に包まれていた。
SEIの両親は病院へ着いて直ぐに、看護師さんに連れられ何処かへ行ってしまった。
アタシは親族ではない。
だから病院の長椅子に座って、待っていた。
静かな院内に、雨音だけが耳に残る。
アタシは取り乱すことも、涙を流すこともなかった。
事態をうまく飲み込めないまま、アタシはこの広い病院で一人ぼっちな気がして、そっちのほうが不安だった。
―SEI。大丈夫だよね…?
アタシはぼーっと窓の外に咲く、北国の遅い開花の八重桜の花が、雨に打たれて散っていく様子を眺めてた。
最初のコメントを投稿しよう!