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そして厳しい冬を終え、春が来た。
その頃から黒猫は
絵描きに甘えてきていた。
郵便受けから中に入っている
郵便物を取りに行くという、芸当まで
身に付けた。
男『あっ、あと少しだけ動かないでくれ』
猫は言われた通り
ピタッと動きを止める。
男『よし、ありがとう。もう動いていいよ。』
猫は再び動き始める。
男『なんか、ホーリーナイトは人の言葉がわかるみたいだなぁ。』
猫(まぁ、実際わかるんだけど。)
男『よし、まだ売りに行くまで時間でもあるし、僕の身の上話でも聞いてもらおうかなぁ。』
と絵描きは黒猫の近くへと座る。
男『僕には彼女がいるんだ。ここの都会ではなく、故郷の実家の方にね。その彼女と何故離れて暮らしているかはね、僕は有名な画家になりたくて、故郷を出て頑張ってるつもりなんだけどね。全然売れないし。彼女とは名が世の中にちゃんと馳せるまで会いには行かないつもりなんだ。でもなんかもう辛いねぇ・・。』
黒猫は絵描きの言葉に静かに耳を傾け聞いていた。そして黒猫は自分の手を絵描きの膝にポンと置いた。
猫『ミャー。』
猫(元気出してくれよ)
男は笑って
男『弱音を吐いてちゃ、売れる絵も売れなくなっちゃうね。ありがとうホーリーナイト。』
男は黒猫に礼を言って街へと売りに行く。
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