第一話 皆様御仕ら世します

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江戸所払いかよせばいき どうせ食いつめて江戸に流れた女だ 江戸を追われりゃ野垂れ死にか、岡場所にでも、もぐりこめりゃあいいんだが 子だくさんの口べらしで人買いに買い取られ娘になるかならないかで女にされて後は男どもの間をたらい回し ちょっと厄介になりゃ道端に叩き出されちまう 結局夜鷹稼業、よくありすぎる話だ」 牢の中のおくらくやしそうに唇を噛んでいる。 「あたいら、あたいらみんな金太郎飴さ」 「どういう意味だおもん」 「さあ、どういう意味かね それより、こいつ出してやる事できないかな」 「おもん、よけいな、おせっかい焼くんじゃないよ」 「うるせえ、おくら、てめえは、黙ってろ」 「なんだとてめえ」 おもんはおくらを相手にせずに、牛スケにまとわりつく。 「なあ、いいだろう、あたいの気持察しておくれよ」 おもん、牛スケの体を指でつつく。 「うん~あたいは、あんたしかたよれないんだよう」 「しょうがねえな、ほれ」 牛スケ、おもんにカギの束を渡す。 番人が怒った。 「困るよ、勝手な事されちゃあ」 「まあ、いいじゃねえか夜鷹の一匹ぐらい」 おもん、おくらの牢をあけてやる。 「出な」 「情けは、いらないよ、余計なおせっかいは、やめておくれ」 「へん、情けなんかかけちゃいないよ 本当は、あたいとやるのが怖いんだろ」 「なんだって」 おくら、牢から飛び出してくる。 二人の女、獣のようににらみ合いながら番屋の外へ出ていく 番屋の外で番屋を背ににらみ合う二人。 「やるかい」 「ちょっと、まちな、ああ言わんとでてこんだろ、あんた」 「あんたの策に、引っかかったってわけかい。 あたいも、焼きがまわったね 礼は言わないよ」 「礼なんか、望んでないさ 片をつけるためだからね」 「やるかい」 「ちょっと待ちなよ、ここで、やってつかまりゃあ、今度はあたいもあんたも、間違いなくよせばは、免れない 場所と時を決めようじゃないか 日時は明日の明け六 場所は神田明神下の祠の近くだ」 「よし、わかったよ ところでアタイは、いいが、あんたは、どうすんのさ」 「アタイかい アタイはふけるのさ」 「いいのかい?牛スケ」 「知ったこっちゃないね それより、しっかり、めかしてきな、最後の晴れ舞台だからね」 「なんだって、それは、こっちのセリフさ
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