第一話 皆様御仕ら世します

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あんたこそ、この世の名残を思い残す事ないようにしておいで」 二人にらみ合い顔を背けあって2方に消えて行く。 本所 深川 ある店の座敷 縦2列に並んでいる町役人と顔役。 上手に主水がたっている。 「私が、今度、この本所深川の仕切りを御奉行日下備前守様より任されました。 中村主水です なにぶん不慣れふつつか者ですが、よろしくお引き立て下さい」 横に侍っていた世話役が言った。 「中村さんは元南の定町廻りをやってられた方だ 皆さん、何か困った事があれば中村さんにご相談して下さい では、一人づつご挨拶お願いします」 先頭の商人ふうの男が主水に近寄った。 「材木問屋をやっております柴川屋忠平と申します よろしくお願いいたします」 「こちらこそ、よろしくお願いします。」 「あの、これ些少ですが」 柴川屋は白いおひねりを主水に手渡そうとした。 「いや、私は、そう言う物は役目がら」 そう言いながら主水、袂を前に出して目で指示する。 「あっこれはきがつきませんで」 柴川屋、おひねりを袂に放り込む。 主水ニンマリする。 「芸者おきや世話役の伊勢屋十兵衛と申します お見知りおき下さい」 主水の袂におひねりを入れる伊勢屋。 押し出すように次の男が出てくる。 「りょ、両替商を営んでる山川屋 こら、押すな」 争うように主水の袂に殺到する商人や町役人。 「うっ生きてて良かった」 街道 満面笑みの主水が歩いている。 突然顔色が変わる主水(BGM 主水のテーマ) 主水、近くの店の火よけ水の陰に身を隠す。 主水背中を叩かれる。 鋭い目を向ける主水 「ひっ💦」 見ると長身で整った顔の若い男が体をちぢこましている。 主水は敵でない事をさとる。 「あっこれは失礼しました 考え事をしてたもんで」 「ああそうですか びっくりしました」 「ところで」 主水は顔で質問した。 「あっもうしおくれました あなた中村さんですね」 「はい、貴方は」 若い侍は返事をするかわりに帯の間から何かを出す。 それはしゅぶさの十手だった。 「これに見覚えありませんか?」 主水は顔を十手にちかずけた。 「これは私の 貴方いったい」 「申し遅れました。 私今度貴方の抜けた穴埋めに北町から移りました田中熊五郎と申します」
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