第一話 皆様御仕ら世します

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建てられていた。 収入についても小普請総支配の役料が、あった時期なら権勢は譜代小大名にも匹敵する。 とても主水など直答できる身分ではない。 なお、小普請総支配とは小普請組と呼ばれる下級旗本を管理する役職で寄合席と呼ばれる上級旗本から選ばれる。 ここで御家にんと旗本の違いを少し 一般的には将軍に御目見え(謁見)出来るかどうかである。 御目見えできれば旗本、出来なければ御家にんである。 もちろん、これは徳川の臣の話で大名の家臣は3万3千石の長家と言えども御目見えは、かなわない。 まあ、難しい事は、ともかく今風に言うと臨時雇いと正社員と考えると、おわかりになると思う 旗本は原則継承可能だが御家にんは抱え席と言う待遇があり、これは一代限りが原則だが当然のように息子に継承された。 これは現代社会でも一緒だろう 景気さえよければ当然契約は延長されるので正社員と似た待遇になるが…・ 突然身分保障がない事を思い知らされる 御家にんとは、そうゆう立場である。 ちなみに旗本並の待遇の与力も御家にんである。 「いや、中村さん、それは、前の話で今は新米与力です」 「しかし、何故大身旗本の貴方様が与力を、やってるんですか? いや、これは、失礼な事を」 「いやいや中村さん、その事についても、お話しますが、人払いが必要な話なので、こちらに」 「そうですか? それではお言葉に甘えて」 主水は、中に入って行く。 主水の通された部屋は三の間と言われる控えの部屋だ。 しかし、けして身分が低いからと言って粗末な待遇を受けたわけではない。 主水の通された部屋は来客棟にあり、ここの次の間は上司(係の長である日暮だと若年寄か老中)を接待するための物だ。 では主室は誰が来た時の物かと言うと、主である将軍である。 もっとも、いくら大身でも旗本の屋敷に将軍がやって来るなどお忍びでしかあり得ず、お忍びなんて架空の話だから実際将軍が外へ出ればお小姓番、御書院番等がぞろぞろくっついてきて御府内(町奉行所支配地域都心と品川ぐらいまでの広域)にある旗本屋敷の周辺は交通機能が麻痺してしまう。 従って主水を三の間で接待する事は主水を旗本家来賓として扱っている事であった。 「まあ、いっこん」 日暮はお銚子を傾けた。 「いや、これは、どうも」 主水は盃で受けた。 「酒と、つまみが、足りないな 中村さん、
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