第一話 皆様御仕ら世します

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しかし、そいつは、しょうがねえんじゃねえか? 例えどあくとうと言えども俺達は他人様の命を奪ってる それに考えてみろ、ごうつくで冷酷な高利貸しでも、家にかえりゃあ優しい親父かもしれねえ 人間てなあ2面性のある動物だからな 正八、俺は最近夢をみるんだ 仕置きに行って返り討ちにあっちまった俺がどぶ川でくたばってる、それなのに、まわりの奴らは、それを見ても何の事もなく日常を送ってる 見た事のねえ、どっかの女が八丁堀死んだんだってねえなんて軽口を叩いてる。 こんな事言うように、なったら俺も終わりかもしれねえ」 鼻をクシュンとする主水 「なんか湿っぽい話になっちまったな」 「じゃあ、仕事やめちゃうの」 「なあ正八よ、俺達の身体に染み付いた血の匂いは、いくら洗っても落ちるようなもんじゃねえ どうせ俺達は地獄行き それなら一丁目二丁目なんてケチな事は言わねえで、いっそ奈落の底まで威勢よくおちようじゃねえか 俺がこの稼業はじめる時鉄と定にこういったのを覚えてるぜ 俺達はワルよワルで無頼よ、だが俺達でなきゃできねえ事がある。 そいつをやろうじゃねえかってよ」
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