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全てを包み込むような闇の中を一人の少年が駆け抜ける。
「逃げなきゃ………。逃げなきゃ!!」
夜の森を走り抜ける少年の左腕を矢が掠る。
「ぎゃ!!!!」
少年はとっさに左腕を押さえた。
軽く掠っただけだというのに、左腕から溢れ出る血はますばかり。
それでも少年は走りつづけた。
左腕の痛みに涙や鼻水が垂れてくる。
それでもやはり、少年は走りつづけた。
恥も外聞も捨てて、ただただ己の命を守り抜く為に。
森の中を必死に走りつづけていると、少し向こうに街があるのが見えた。
「やった…………!!」
少年は喜びのあまり、腕の痛みすら忘れて、森に向かって走り出した。
そんな少年の後を、弓や刀を持った男達が追いかけてくる。
が、命がけで必死な少年にはなかなか追いつけなかった。
今回の加速で、更に早くなってしまったので、更にその距離は遠ざかる。
男達は前方に街を確認すると、急に立ち止まった。
少年が街に逃げ込んだとなると、男達にとってはかなりまずい事態になる。
住人達が少年を庇ったり、逃がしたりする可能性があるからだ。
それにも関わらず、男達のリーダー的存在の茶髪の優男は、余裕綽々といった様子でニタァと笑った。
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