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柚羽の家に着き、緊張しながらも中に上がった。
柚羽は一人暮らしでアパートに住んでいる。
久しぶりに入ったせいか、妙に緊張する。リビングに案内され、ソファに座った。
周りを見渡すと、前と変わらない温かい部屋の中。
「そーちゃん、ゆっくりしてってね。」
柚羽がたまに俺を“そーちゃん”と呼ぶ。呼び方には、あまり拘らないけど、2人っきりの時じゃないと正直照れくさい。
「うん、ありがとう。」
2人ともソファに座り、この前レンタル店で借りてきたDVDを見ることにした。
しばらく2人でDVDを見続けていると、時刻は19時。
「うわぁ、もう夜だ。そーちゃん、ご飯食べていってよ。」
柚羽はキッチンに向かって、俺に笑いかけながら言う。
「うん、食べてく。
何作るの?」
「カレー。」
「あはは、何か定番って感じ。」
「でも初めてだよね。そーちゃんにカレー作るの。」
「うん、初めて。
柚羽、まったく料理出来なかったから、いつも俺作ってるし。」
「で、でもカレーは作れるようになったから!空に食べてもらいたかったの。彼女の初めての手料理だよ。」
「はいはい。じゃあ今度は、カレーじゃなくて豪華な手料理期待してますー。」
「カレーも私にとっては、豪華なの。邪魔しないでテレビでも見てて。」
初の手料理。
そんな響きがもどかしかった。
女の子には何かと不自由はしてなかったけど、柚羽を好きになった。
柚羽とは、色んなことも初めてみたいに感じる。
“女の手料理”なんて、何回も食べてきた。でも、“柚羽の手料理”ってだけで特別に感じた。
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