第一章

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いつもより早めの通学。ひかりは冬が嫌いだった。 この季節には、いい思い出がひとつもないからだ。 "お母さんとお父さんは、交通事故で亡くなった" まだ幼かったひかりが、祖母から聞かされた話。ひかりは物心がつく前から、祖父母に育てられていた。 両親が亡くなったのも、その話を聞かされたのも、季節は冬だった。 そして2年前ー… "ご臨終です" 2年間寄り添った恋人、悟もまた亡くなった。死因は心臓病だった。 これもまた冬のことー… ひかりにとって冬とは、最も苦しい季節だ。決して記憶の中から消えない思い出。 まだ高校3年生のひかりは、重たすぎる過去を背負い、それでもただ前を向いて一生懸命歩いている。 そして今年もまた、冬が訪れたのだー…
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