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「ねぇ、ひとつ聞いてもいい?」
ラスネはそう言った。
その声に、かたわらのレントは彼女の眼を見た。
その瞳は今にも崩れ落ちてしまいそうな群青に染まってる。
「あなたはいったい何を恐れているの?」
するとレントはラスネに顔を近付けて彼女に聞こえるだけの声で囁いた。
「君が一番恐い」
ラスネは眼の中の黒を大きく見せ、そしてしぼませた。
「そう……分かったわ」
ラスネはそう言って闇の中に向かって歩き出した。
その時、レントはラスネの細い腕を掴んだ。
ラスネは振り返る。
レントは彼女の瞳を見つめる。
彼の眼差しは彼女とは違った淡い朱色をしていた。
「君は僕の重荷だ。この先も」
ただ一言、彼はそうして口づけを彼女にほどこした。
ラスネは一瞬手を上げそうになったなったが、すぐに止めて下ろした。
彼女の群青が崩れ落ちた。
その口づけは、二人にとって最初の悲しい口づけで最後の別れの口づけになった。
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