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月面基地に着いたシャトルから次々と人がロビーへと流れ出てくる。
基地内は重力制御装置が働いていて、地球と変わらない歩行が可能だ。
「うわあ……」
月面と言えど、月の地下にも通路などが張り巡らされた基地なので思ったよりも広く、ひかるは感嘆の声を上げてしまう。
ひかるは小さい頃に精々一度か二度くらいしかこの月面基地に訪れたことがなかったため、改めてその広さに圧倒されたのだろう。
生徒らしき子供達の何人かも同じような反応をしていた。
『SDS入学生の皆様は、ゲート25またはゲート28にお集まり下さい。なお、本人確認のため、学生証を提示して頂きます……』
電子案内板から生徒へのアナウンスが流れ、生徒達はぞろぞろとゲートへと向かい出した。
そんな時、ひかるは後ろから強い衝撃を受け、床に膝をつく。
「痛っ」
振り向くといかにもお嬢様らしい白人の少女が、不機嫌そうな顔で大きな荷物を引きずっていた。
どうやら彼女の荷物がひかるに当たったようだ。
しかもその少女は謝りもせず、ずかずかと人波をかきわけてゲートへと向かっていく。
他にもいつもなら使用人に荷物を持たせているのだろう貴族の少年少女達が、不機嫌そうな顔で大きな荷物を持っていた。
「大丈夫?」
膝を軽く払っていたひかるに、一人の少年が声をかけてきた。
深い黒色の髪と灰色の瞳を持つ浅黒い肌の少年だった。
「うん、平気。それにしても彼女達すごい荷物だね」
必要最低限しか持ってきていないように少ない荷物を背負う少年は、貴族の少年少女の大荷物を見て溜め息をつく。
「使用人なんか呼べやしないのにいつもの調子で何でも詰めてきたんだろうさ。持つのは自分なのに」
「そうだね」
ひかるは苦笑して、少年とゲートへと歩き出した。
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