遺恨

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         一  気持ちのいい晴れた朝だった。十月に入り、少し、朝は寒さを感じ始める季節になってきたが、こんな寒さは妙に心地が良い。 窓の外に並んだイチョウの木を眺めながら、皆川 舞は溜め息を吐いた。 「どうしたんですか?皆川さん。溜め息ついちゃって……。 恋でもしてるんですか?」 四つ年下の佐倉 奈津子がお茶を入れながら冗談混じりに問うと、舞はフフっと笑った。 「そんなわけないじゃない。 ちょっとね。考え事」 舞は頬杖をつき、スラリと伸びた長い足を組み代えた。
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