日常1 《黒猫亭の看板娘》

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神奈川県。 橋を1つ越えれば、すぐに東京都に入る神奈川県内の更に端。 都市開発によって、ここ数年の内に急成長した街にその店はあった。 古い木造建築を改装した店。 その入り口には達筆な文字で【黒猫亭】と書かれている。 その佇まいから、この【黒猫亭】が何の店か?それを即答出来る人は少ないだろう。 何せ、この店は何の店なのかを表す物が外からは一切見えないのだ。 いや1つだけある。 それは香り。 【黒猫亭】からはいつも良いコーヒーの香りが漂っているのだ。 しかし、喫茶店と思って入店した客は驚愕するだろう。 何故ならここは・・・ 《にゃー。》 《みー。みー。》 《ふにゃぁぁぁ。》 「可愛いーっ♪」 「おいで、おいでー。」 「やべぇ・・・癒される。」 「でしょー?」 ・・・猫カフェなのだから。 車10台を止められる程の広い店内。 その店内を真っ二つに分けるガラス張りの壁。 それはこの店のオーナーが猫と戯れる場所とコーヒーを楽しむ場所とで分けたからである。 そう言えば、猫カフェをご存じだろうか? よく街に点在する猫カフェは猫と戯れる場所であり、お茶を楽しむ場所ではない。 大抵が1ドリンクオーダーで決められた時間辺りの金額を払い、時間制で猫と戯れる場所なのだ。 しかし、この【黒猫亭】は違う。 ここは時間制などで金銭を要求しない。 ここは、あくまでカフェであり猫達は従業員と言うくくりなのだ。 違う点は他にもある。 まず、オーナーの入れるコーヒーが異常な程に美味い事。 この味に惚れ、遠方からも客が尋ねてくる程である。 そして、猫達が本当に聞き分けが良く、まるで人間の言葉を理解しているかのように振る舞う事。 悩みを抱えていそうな客には何もせずに、横で寄り添ってくれる猫。ストレスを抱えた客には思い切り元気な猫。まるでそれらが客を判断し理解して動いてくれているような不思議な猫達。 最後に・・・顔色が最高に悪く、見るからに悪魔の使いのような顔のオーナーがいる事。 しかも、元死神である。
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