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オーナーの名前を【クロ】と言う。
彼は今日も自分が南米などを、渡り歩き見つけた自慢の豆を挽きながら店内をにこやかに観察していた。
まぁ、にこやかと言ってもこの顔色である。
客の間からは【笑う死体】と不名誉なあだ名を付けられている事を・・・本人は知らない。
店は平日だと言うのに大盛況。
正に・・・
「・・・猫の手でも借りたい気分です。」
とクロの口から漏れるレベルの忙しさであった。
それもそのはず、多くの従業員がいると言っても多くは普通の猫。
人は・・・いや、クロは人ではないが・・・人の形をしているのはクロと従業員の女性【志乃】のみである。
《みぁー。》
おっと、もう1人・・・いや、特別な1匹を忘れてはいけない。
「おや?ミア。私に手を貸してくれるのですか?では、コーヒー豆を持ってきていただけますか?」
《みぁ。》
ミアと呼ばれた灰猫。
美しい毛並みに特徴的な鍵尻尾、そして欠けた左耳。
キュッと、引き締まった身体は猫としての野生を失っていないのを強調しているようにさえ見える。
ミアは小分けにしたコーヒー豆が入った麻袋をくわえると、手慣れたようにクロの側まで運んで来た。
勿論、ミアはただの猫であり特別な教育をしたとか、実は獣人とかなどではない。
おそらく言葉など理解していないであろうミアだが、何故かクロの言う事を理解しているような行動をするのだ。
本日はこの猫のミアとクロが出会った頃の話をしようと思う。
《みぁー・・・みぁ?》
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